不倫慰謝料を請求されたが、お金がなくて払えない!
妻(夫)ある人と恋愛関係に陥り不倫をしていたところ、交際相手の配偶者にばれてしまい、高額な不倫慰謝料を請求されてしまった場合、誰もが驚き慌ててしまいます。
不倫は道徳的に良くない行為であるではなく、民法上でも不法行為に該当します。
民法上、不法行為を行った人は損害を被った人にその損害を金銭で償う義務があり、それが不倫慰謝料です。
不倫慰謝料を請求されたら、そのまま応じるのか、交際相手と別れるのか、決断をしなければならないことが多くあります。
不倫慰謝料を実際に払えるのかどうかも、経済状況によっては大きな不安になるでしょう。
この記事では、不倫慰謝料を請求され、ご自身でも非があると認めて不倫慰謝料を支払って一からやりなおしたい、けれど請求された金額を支払う経済的余裕はとてもない、という方のために、その対応方法をご説明します。
1 不倫慰謝料の相場
不倫慰謝料について、法的に決められている金額や算定式はありません。
不倫慰謝料は、不倫をされた相手方配偶者の精神的損害という数値化しにくい損害を填補するという性質上、一律に決められた金額に決定するということになじまないからです。
同じ状況でも精神的損害は感受性によっても違うので、相手方配偶者が一体いくらで請求してくるのか読めません。
しかしながら、被害者とはいえ言い値がすべてそのまま通るというのは不合理ですので、不倫慰謝料の相場というものはだいたい決まっており、50万円~300万円といわれています。
慰謝料の額は、不倫関係の期間、回数、どちらが関係をリードしていたのか、不倫カップルの年齢差、経済力という不倫をしている男女側の要素と、不倫をした配偶者(法的には有責配偶者といいます)と不倫をされた配偶者側の要素(たとえば、結婚期間の長さ、子供の有無、夫婦の年齢、不倫関係に陥る前の結婚生活の状況)など、さまざま事項が加味されて決定されます。
また、不倫によって最終的に離婚するかどうかでも慰謝料相場は変わります。
しかしながら、裁判例の積み重ねなどで、だいたいの範囲は決まっています。
2 不倫慰謝料の支払い義務
民法709条は、故意または過失により他人の生命・身体・財産に損害を与えた者はその損害を賠償する義務があると規定しており、民法710条は、その損害は財産的損害に限られないとしています。
日本の民法では、結婚した男女は相手以外と肉体関係をもってはならないという貞操義務をお互いに有するので、これに違反すると不貞行為となり、相手方の配偶者に不法行為責任を負います。
有責配偶者だけではなく、既婚者であると知りながら(または知っていて当然という状況下で)、有責配偶者と肉体関係を持った場合、共同不法行為をしたということになります。
したがって、基本的に不倫慰謝料は支払わなければならないのです。
ただし、例えば有責配偶者が独身であると巧妙に騙して関係を持った場合や、有責配偶者から脅迫や強姦などによって関係を持ったという場合は、不倫相手の方は不法行為をしていないということになります。
したがって、不倫慰謝料を請求されても慌てずに、ご自身がこういった状況に該当するのかどうか、請求された不倫慰謝料の金額が上記の相場に比して妥当なものなのかを落ち着いて検討しましょう。
3 不倫慰謝料を支払えない場合
不法行為をしているという自覚があり、不倫慰謝料を払うと決めた場合、実際に自分の生活からそれらの金額を捻出できるかどうかを検討する必要があります。
50万円から300万円は、一般的な人には大金であるといえます。
貯金などがあって支払えるという場合は別として、稼ぎの中から無理なく払えるかを検討してみましょう。
これはとても支払えないという場合は、弁護士に示談交渉をお願いすることが近道です。
被害者である配偶者は感情的になっていることも多く、直接交渉するとかえって話しがこじれてしまうケースは多くあります。
また、不倫をしてしまった人としては相手の罪悪感があるので、交渉上弱気になってしまうこともあります。
反省し謝罪することは必要ですが、ご自身の生活を守るためにも、慰謝料の支払交渉は慎重に、第三者である弁護士に客観的にやってもらうことがおすすめです。
⑴ 減額交渉
不倫慰謝料が相場と比べて高額に請求された場合は、まず減額交渉ができないものか弁護士に相談しましょう。
請求する側としても、交渉の手段として、こちらが減額交渉してくることを織り込み済みであえて高い金額を請求してくるというパターンが多いです。
ただ、そのまま払ってくれればラッキー程度に考えている場合もあれば、怒り心頭で本当に請求したいと考えている場合もありますので、相手方の態度や出方を見ながら交渉していく必要があります。
しかし、相場から余りにもかけ離れて高額な請求ある場合は、すぐに応じる必要はないかと思われます。
慰謝料の相場は強制的なものではないため、当事者同士が一度合意してしまうと、それがそのまま慰謝料の額になってしまいます。
そのため、安易な了承は控えたほうが良いでしょう。
⑵ 分割払い
働きながら返していくという場合は、分割払いにしてもらえないか交渉してみましょう。
生活に支障が出る金額を貯金から支払ってしまうと、暮らしが困窮することがあるので、無理のない範囲で継続して一定の金額を支払っていくことができる分割払いが安心です。
請求する相手からすると、支払いを確認したり長く折衝したりしなくてはいけない分割払いはデメリットが多いので、最初は一括払いを望むことが多いです。
しかし、最終的には全額回収できることのほうが多くの人にとって重要ですので、分割払いでなければ払えない旨を誠実に状況を説明すれば、分割払いに応じてもらうことも期待できます。
気をつけたいのは、分割払いをする際は、期限の利益喪失条項といって、一度でも分割払いを滞納すると残金は一括ですぐ払えという条項をつけることが一般的だということです。
分割払いの場合には、絶対に滞納しないように対応しましょう。
また、遅延利息といって、14.6%程度の遅延利息金も契約条件としてつけるケースが多くあります。
⑶ 支払期日延長
たとえば、将来まとまったお金が入る予定がある場合は、返済期日を少し先にしてもらえるように交渉するという手段もあります。
たとえば、親兄弟に時期をみて相談して、無利子で慰謝料に相当する金額を借りられるあてがあるという場合には、有効な手段でしょう。
ただし、カードローンなどは金利が高いですので、注意が必要です。
4 不倫慰謝料を請求されたら弁護士に相談を
不倫慰謝料が高額すぎて支払えない場合は、安易に了承せず、離婚分野に詳しい弁護士に示談交渉を依頼して、減額、分割、期日延長を交渉してもらいながら、自分でも節約と収入アップの努力を通じてお金を捻出していけるように努力することが大切です。
不倫慰謝料を請求された時には1人で悩むことなく、まずは弁護士に対応策をご相談ください。
弁護士法人心では、依頼者の方を全力でサポートします。